ZENCODE(理化学研究所)
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プロジェクトの目的
近年の次世代シーケンサー(NGS)の著しい進展、およびそれに伴い大量に生成されたデータの解析は、欧州において情報科学における専門知識の決定的な不足を招いている。次世代シーケンサーによって解読された塩基配列の情報は、基礎科学から個人化医療まで広く利用されることが予想されるため、高度な技能を持ち、情報科学(ドライ)と実験(ウエット)の両方で訓練された若い科学者の育成が緊喫の課題となっている。
各課題代表者は、各々の共同研究を通じ、ポストゲノム時代における重要な問題に数多く取り組んできた。本プロジェクトでは、情報科学・発生ゲノム科学において、堅固な基盤的技術を提供することを目的にしている。発生ゲノム科学は、個体発生論や多くの遺伝的・先天的異常を理解するうえで非常に重要であるものの、「ENCODE」や「FANTOM」に代表される国際的大規模遺伝子解析プロジェクトでは解析の対象外であった。
ENCODEプロジェクトは、全ゲノム規模での機能注釈(ゲノムアノテーション)から生まれた仮説に対し、生体内でハイスループットかつ機能的にそれらの仮説を検証可能な、脊椎動物モデル生物の必要性を浮き彫りにした。ゼブラフィッシュは、脊椎動物の発生における、ゲノム科学の領域を拓く上で理想的なモデル生物である。我々は、機能的なゲノム領域を網羅的に注釈付けするとともに、転写時のゲノムや、発生時におけるコード・非コード遺伝子の機能を解明することを目的としている。さらには、ゼブラフィッシュを発生生物学における、ヒトを含む脊椎動物間で広く比較可能な疾患研究へ、より広く利用されることを目的としている。
本プロジェクトの課題参加機関のうち、7つは非学術機関(うち2つは受益者)であり、それぞれ、ゼブラフィッシュのゲノム科学で著名な研究室、FANTOMとENCODEプロジェクトにおいて顕著な成果を輩出した計算生物学者、および世界的に著名なゲノム解析技術のエキスパートで構成される。本プロジェクトで実施するトレーニングプログラムは15人のESR(Early Stage Researcher:主に博士後期課程の学生)に対し、1人あたり19ヶ月の合計40を越す参加機関間での学際的な出向、7回の技術講習、2つのワークショップと学術会議が提供される。このプログラムを通じて、計算科学(ドライ)・実験(ウエット)の両輪で、アカデミア・公的研究機関・民間企業においてすぐさま活躍でき、その先のキャリアを更に高めることができるような研究者の育成が期待される。
ZENCODE-ITNの日欧協力について
理化学研究所様
理化学研究所は、過去にゼブラフィッシュを用いたゲノム科学研究においてEUの参加機関と共同研究を行った経験があります。ゼブラフィッシュは、生物学における多くの側面、特に遺伝子制御、遺伝子発現、さらには疾患研究においても素晴らしいモデル生物です。ZENCODEプロジェクトは、膨大なゲノム資源の整備に貢献し、EUの優秀な研究者たちと引き続き共同研究を続けるための可能性を秘めています。
本コンソーシアムに参加することで、(1) 研究に関する情報やコンソーシアム内で生まれる全ての実験データ、(2) 専門知識、(3) コンソーシアム内で確立された新しい技術を利活用することができ、他のプロジェクト参加機関と日本の間で、遺伝子を相互的に検証する際に大いに役立っています。このことにより、理化学研究所が主宰している国際コンソーシアム「FANTOM(Functional Annotation of the Mammalian Genome)プロジェクト」(http://fantom.gsc.riken.jp)においても、強力な相乗効果を生み出せると考え、当プロジェクトに参画しています。
Project Details
- Pillar: Excellent Science
- Period: From 2015-01-01 to 2018-12-31
- Total cost: EUR 3,948,843.96
- EU contribution: EUR 3,948,843.96
- The Japanese partners in this project used EU funds.
(EU contribution: EUR 268,361.64)
Project Participants
Coordination:
- THE UNIVERSITY OF BIRMINGHAM (United Kingdom)
Members of the consortium:
- IMPERIAL COLLEGE OF SCIENCE TECHNOLOGY AND MEDICINE (United Kingdom)
- MAX-PLANCK-GESELLSCHAFT ZUR FORDERUNG DER WISSENSCHAFTEN EV (Germany)
- KAROLINSKA INSTITUTET (Sweden)
- KING’S COLLEGE LONDON (United Kingdom)
- UNIVERSITE DE LIEGE (Belgium)
- GENOME RESEARCH LIMITED (United Kingdom)
- KARLSRUHER INSTITUT FUER TECHNOLOGIE (Germany)
- RIKEN THE INSTITUTE OF PHYSICAL AND CHEMICAL RESEARCH (Japan)
- CONSORCI INSTITUT D’INVESTIGACIONS BIOMEDIQUES AUGUST PI I SUNYER (Spain)
- BGI EUROPE INSTITUTE FOND (Denmark)
- My-AHA(東北大学、株式会社ジェイアイエヌ)
- CD-LINKS(国立環境研究所、地球環境産業技術研究機構)
- ECOTIP (北海道大学・東京大学)
- ZENCODE(理化学研究所)
- PROTINUS(熊本大学、埼玉大学)
- DDM-GNI (早稲田大学)
- INCAS(早稲田大学)
- ATLANTIC (筑波大学)
- JENNIFER 2(高エネルギー加速器研究機構)
- ThermaSMART(九州大学)
- CybSPEED(九州工業大学)
- DRYNET(農業・食品産業技術総合研究機構)
- NEWS(国立天文台)
- InRel-NPower (三重大学・九州大学)
- RAPID(大阪大学)
- SAFARI (日本電信電話株式会社)